黒字という病


中小企業の6割から7割が赤字だという
統計がしばしば紹介されます。
経営はやはり厳しいですね。

この統計をベースに考えると、
黒字であるということ自体が
非常に優秀に見えます。

赤字よりも、当然黒字のほうがいい。

資金繰りも安定し、銀行から評価も
されている。
社員にも
「うちはちゃんと利益が出ている」
と胸を張って言えます。

だから多くの経営者は、こう考えて
しまいます。

「うちは大丈夫だ」
と。

しかし、本当にそうでしょうか?

ここで注意しなければいけないのは、黒字は
“過去の結果”
という事実です。

決算書に出ている利益は、
これまでの経営判断の積み重ねの結果です。
この意味では黒字を出しているということは
凄い!

しかし、それはあくまで過去のことであって、
未来を保証するというわけではありません。

むしろ、黒字であることが、変化を
遅らせてしまうことも多々あります。

人は、痛みがない時には動こうとはなかなか
思いません。

しかし、
赤字になれば危機感が生まれます。
資金繰りが逼迫すれば、収益構造の見直しに
着手します。
社員が大量に辞めれば、組織の在り方を
見直します。
※ただ、本当は赤字になってからでは
遅いのですが。

しかし黒字の場合はどうでしょうか。
「まあ、利益は出ている」
「今すぐ困るわけではない」
「このままで当面良いのではないか」

こうして、本来、早めに実施されるべき
構造の見直しは先送りされます。

つまり
「進化する!」という意思決定を先延ばし
するということです。

そして数年後、競争環境が一段と厳しくなったとき、
初めて気づきます。
「利益率がじわじわと下がっている」
「価格交渉で押し切られることが増えている」
「採用がうまくいかない」
「若手がすぐに退職してしまう」

黒字だったはずなのに、
なぜか未来に自信が持てない。

その理由は明確です。
黒字であることと、
競争力が高いことは、別問題だということです。

本当に見るべきなのは、
「その黒字は、どの構造から生まれているのか」
という点です。

例えば、次のようなケースはありませんか。
・特定の大口顧客に依存している
・たまたま大口の受注が入った
・人件費を抑えて無理をしている
・設備投資を先送りしている
・教育費を削っている

これらによって生み出された黒字は、
一時的なものです。

いわば、“未来を削って作った黒字”です。
黒字の中身をよく分析すると、そこには「持続性」が
ある場合と、ない場合があります。

持続性のある黒字とは、
・適正な価格で取引できている
・一定の粗利が確保できている
・人材が育ち、組織力が高まっている
・設備やITを活用して業務効率が上がっている
・新しい柱の芽が育っている
などの状況から生まれます。

このような構造から生まれる黒字は、
時間とともに強くなります。

一方、持続性のない黒字は、
時間とともに脆くなります。

数字は同じでも、意味がまったく違うのです。

経営者が本当に見るべきなのは、
「利益が出ているかどうか」ではありません。
「その利益は、未来を作っているか」です。

ここを誤ると、
黒字はむしろ安心材料ではなく、
“思考停止の装置”
になってしまいます。

黒字だから変えようと思わない。
変えないから進化しない。
進化しないから競争力が落ちる。
そしてある日、
外部環境が大きく変わった瞬間に、
一気に崩れる。

これは珍しい話ではありません。

実際、黒字にある状態の時に悪化の兆しが出ている
中小企業は多くあります。
例えば
・限界利益率が下がってきている
・労働分配率が上昇している
・営業利益率が悪化している
など
こうした”静かな後退”が起きている企業は
少なくありません。

「なぜあの時に手を打たなかったのか」と後から
悔やんでも手遅れになります。

黒字はゴールではありません。
黒字は、未来への投資余力を示す“材料”です。

黒字を守るのではなく、黒字をどう活用するか。
ここに経営の本質があります。

もし今、あなたの会社が黒字であるなら、
それは素晴らしいことです。

しかし同時に、問いかけてほしいのです。
「この利益は未来の競争力を強くしているのか?」

黒字は安全を保証するものではありません。
黒字は、次の一手を打つためのエネルギーです。

そして、そのエネルギーをどう使うかで
あなたの会社の未来は変わります。

あなたは、そのエネルギーをどう使うでしょうか?


持続的成長戦略- 中小企業を優良企業に導くメルマガ に登録