「質の高い努力」にこだわるなら「質の低い努力」を恐れない


今回のコラムでは、質の高い努力を実施するには、質の低い努力をすることも必要だという話をします。

弊社は「経営努力の質を高める」ということにこだわりを持ってコンサルティングをしています。

先日、とあるセミナーでこの趣旨を説明する一環として
「ある施策を実施する際に最初から望ましい結果を出す事は大切ではあるが、それよりもより重要なことは、その施策を修正して、施策の精度を上げ続けること」
というお話をしました。

すると、ある方から

「修正することが大事だということはわかりました。
でも、それなら一番最初の施策は失敗して良いということですか?
最初の施策にかける費用が無駄になってしまうのは受け入れがたいです」

というご質問を受けました(質問というより批判かもしれませんが)。

皆さんはどう思われますか?

実は同じような質問を受けることはしばしばあります。

ちょっと言い方がきついかもしれませんが、
「最初の施策にかける費用が無駄になってしまうのは受け入れがたい」
という考え方をする方はチャレンジを阻む典型的なタイプで、
このような質問をされる方は会社は業績が停滞、あるいは低迷させるのを意図せず
助長している可能性が高いです。

もちろん何か施策を打つ場合、何も考えなくて良いのでとりあえず実施するというのは
乱暴で、ある程度のリサーチはした方が良いです。

しかしながら、いくらリサーチに時間や費用をかけたとしても、やろうとしている施策が確実に成果を生むという確証を得られることは決してありません。

初めて実施する施策への費用を無駄にしたくないと考えすぎてしまうと、結局何もできなくなり、今までと同じ施策をただなぞるだけということになります。

仮にその施策が過去に成果を出しているものであったとしても、市場環境や競争環境が変わっているため同じ結果を得ることは難しく、過去よりも低い成果に留まるケースがほとんどです。

成果は落ちているのに(≒業績が下がっているのに)、今までと同じことを闇雲に繰り返すだけで、結局何の改善もできないということなります。

私がクライアントさんにお勧めしているのは上述の考え方とは全く別のものです。

土台にある考え方は以下の4つです。

1.実行する施策が全て成果を出すということはどれだけリサーチしようともあり得ない。ほとんどの施策は望んでいる結果は得られない。そういうものだと受け入れる。
⇒この段階では、望んでいる成果は出ないので「質の低い努力」という位置づけ

2.最初に行う施策は、その結果の良し悪しよりも、データを取ることに主眼を置く。つまり、施策実施前に考えていた仮説が正しい方向なのか、違っているのかを検証する。データを取ることが主眼なので最初から大きな投資をする必要はなく、小規模な投資からスタートする。これによりロスを最小限に抑える。

3.施策の実行から入手できたデータは先入観なく検証する。この段階で余計な先入観や忖度が入ると施策の質を向上させる上で大きなマイナスになりうる
⇒この段階で努力の質が向上する

4.正しい仮説検証を行い、想定と違った内容は修正した上で実行する施策に反映させる。このプロセスを繰り返すことで、高い確率で成果につながる施策を生み出すことができる
⇒この段階で「質の高い努力」に昇華できる

何か新しい施策を行う際には失敗はつきものという覚悟が必要です。この段階では、質の良い努力が何であるのかを見極めるための投資と考えるべきです。


初めてやる施策がうまく行かない場合にすぐに担当者へ責任を問う企業は少なくないですが、このようなことを行っていると、どの社員も新しいことをやろうとしなくなります。何もしないほうが評価上有利だからです。

業績を向上させるという観点で考えれば、この段階で実施すべきことは「誰の責任か」を問うことではなく、

「どうすればより良い結果を得ることができるか」

のはずです。この点に集中するべきです。

実際に施策を実行した後の結果からは、施策実行前に行うどんなリサーチよりもかなり示唆に富むデータが得られます。

このデータを活用しないということは大変もったいないことなのですが、多くの企業がその結果だけを見て「良かった」とか「悪かった」という評価をするに留まっているのが現状です。これでは最初の投資を無駄に終わらせてしまいます。

検証結果から

・何が当初の想定と違ったのか

・想定通りだったことはないのか。あるいとしたら何か

・これらの結果を踏まえて、施策をどう進化させるべきか

という点を考えて、以降の施策に反映させていくべきです。この繰り返しを行うことが努力の質を上げていくことになります。

つまり、質の良い努力を行うためには、質の低い努力も必要だということです。

企業活動なので、結果にこだわるのは当然です。しかし、その結果の意味はトータルとして良い結果を出すことであり、どの施策も失敗しないということではないはずです。

中堅・中小企業の場合は財務面で盤石である企業の割合は低いので、「失敗できない」という考え方を持つことは当然理解できます。

しかしながら、あまりにもそのことばかりを考えてしまうと新しい施策が生み出せず、結果として益々業績が厳しくなります。

「努力の質を高める」という意識があれば、最初は失敗に見えるような施策でも、その学びから施策の精度を上げることができます。

これこそが「質の高い努力にこだわる」ということであり、最短で目標に到達する方法の一つです。

是非貴社も、結果の良し悪しだけを見るのではなく、その結果から何を学べたのか、その学びをどう活かすのかということを考えていただき、日々の経営を実践いただければとても嬉しく思います。


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