「何かあったらどうするんだ!」という問は企業成長を止める


チャレンジを積み重ねよう

昨日、日経新聞を読んでいたら元陸上選手の為末大さんがSNSで書かれている「何かあったらどうするんだ症候群」についてコラムがありました

今の日本全体を言い表している素晴らしい内容だと思ったので、為末さんのFBを見てみました

私は素晴らしい内容だと思ったのですが、色々賛否があったようでフォローの投稿もされています。フォローの投稿も面白いです。世の中、想像力なのか文書理解力なのかわかりませんが、それが足りなくて色々批判する人っているんだなぁと思いました

為末さんが書かれている「何かあったらどうするんだ症候群」ですが、私は日本の多くの企業でも全く同じ症状が出ているのではと考えています

何か新しことにチャレンジすることが必要だとは頭ではわかっているが、「何かあったらどうするんだ!」という社内の一部の意見に負けて、結局何もできないまま停滞状態を続けている、という企業が数多くあります

企業経営において、この「何かあったらどうするんだ!」とチャレンジを妨害する人は大きくは二つのタイプに分かれます

一つは

「自分の仕事を変えたくない」

または

「自分の仕事がなくなる」

と不安に感じるタイプです。

仕事がなくなると感じる人には次にこのような仕事をしてもらいたいと伝えることで対応が可能なのですが、自分の仕事を変えたなくないと思っているタイプは多少厄介です。

こういう人は会社の成長よりも自分の現状維持欲求を優先させているということになります。仮に今、このタイプの人の仕事が会社に貢献してくれているとしても、長い目で見た場合は会社の変革を阻害し、結果として会社の成長を妨害する人材となります。

対応策としては、本人のマインドが変わらない限り(変われるようにアドバイスは実施すべきだと思いますが)、少しずつ重要な仕事から外していき、最終的には影響力がほとんどないポジションに移ってもらうことを私は経営陣にお勧めしています

二つ目のタイプは、本当に会社のためを思って「何かあったらどうするんだ!」と心配して言っているタイプです

個人の利害ではなく会社のためを思って言ってくれているので、その点は評価すべきなのですが、このタイプはチャレンジがうまく行った時のプラス面よりも、うまく行かなかった時のマイナス面のほうが大きく感じてしまうタイプです。

得られるメリットよりも失ったときのデメリットを大きく感じるのは「プロスペクト理論」と言い、人間の心理においてはむしろ自然なことです

このタイプへの対応は簡単ではないのですが、私は以下の3点を基本方針としてチャレンジを進めていくようにしています

1.経営陣が「今は新しいやり方を試すということに重点を置く」と宣言し、チャレンジを引っ張るリーダーシップを発揮する

2.まずは、うまく行かなくてもさほどダメージがない比較的小さめのチャレンジから実施する

3.チャレンジのサイクルはできるだけ早めて実施し、徐々にチャレンジ度合(インパクトの大きさ)を上げていく

過度に心配性な社員でも、リーダーが方針として掲げている、かつ新しいチャレンジがさほど大きなものでなければ、気が進んでいないながらも大きな抵抗をすることは稀です

最初の小さいチャレンジがどんな形であれ、効果を生めば次からのチャレンジへの抵抗感が低くなります。かつ、これを早いサイクルで回すと組織全体に新しいことにチャレンジする空気感が生まれ、さらに抵抗感が少なくなります。

このように、いきなり大きなチャレンジをするのではなく、小さなチャレンジを短いサイクルで実施し、繰り返すに従ってチャレンジの大きさを拡げるようにしていけば「何かあったらどうするんだ!」症候群から抜け出しやすくなり、企業の変革と成長を加速します

私のコンサルティングの現場においても業績が芳しくない会社の多くがほとんど新しい取り組みをすることなく、従前のやり方を踏襲しています

「業績が思わしくないのに、なぜ同じやり方を続けるのですか?」と質問すると(もう少し優しい表現で聞きますが)、出てくる回答は「やり方を変えることはリスクが高い」というものです

一方で、業績が回復していく会社の多くは、今までのやり方を変えるには勇気がいるもののその勇気を出してチャレンジを繰り返し、その結果を振り返っている会社です

確かにチャレンジにはリスクはありますが、インパクトが小さいことから徐々に大きくしていけば、過度に大きなリスクを抱えることなく社内に変革の雰囲気を作ることができ、それが自社の成長をもたらします

最初はちょっとした帳票の変更レベルから始まったとしても、それを繰り返すことで業務の改廃、また新たな投資の実行へレベルアップし、最終段階として新規事業開発にまで進めていくことが可能です

このレベルまで来ると、前回のコラムで書いた中小企業における両利きの経営が実践されていることになります。このステップを踏むことが企業の持続的成長につながると考えています

チャレンジを積み上げる会社と現状維持のみを行う会社、最初はほとんど差がないとしても時間の経過に従い雲泥の差が出ます

もしもあなたの会社が「何かあったらどうするんだ!」症候群にかかっていると感じられるなら、まずは小さなチャレンジから始めてみてはどうでしょうか